松山政治思想研究会

政治学や隣接分野(哲学、歴史など)を不定期で学ぶ学生の勉強会。

8月2度目の懇談会

 前回に引き続き、ゲスト参加の方と懇談会で交流しました。浪人生の方で、愛媛県出身だが、趣味の関係上、首都圏の大学を目指したいのだそう。最初から四国は眼中にないみたいで、この辺りは地方の文化的な不毛ぶりが露呈していると思いました。

 サークル活動の話やお互いの自己紹介をしているうちに、話題は現在の政治情勢や様々な社会問題に関する方面へ。

 劣悪な労働環境の改善など、身近な生活課題を解決してくれる受け皿が存在しない、というのはまさにその通りで、象徴的にはメーデーの日に労組が護憲や政権批判などの様々な政治的主張を引っさげている分、一般人は近寄りがたいのではとする意見には説得力があります。

 ただ、管理人個人は、経済的な主張と政治的な主張とを結びつける方法そのものにはあまり異論がないです。むしろ現政権のやり口を見てると、政治的な主張を通す手段として経済政策がそれなりの効力を発揮している状況なので、左翼もどんどん同じことをやれば良いと思います。ただ、政治的主張を本当に実現させたいのなら、経済政策にも関心を持たなければ意味がないよということで、この辺は『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』でも論じられている通り。

 どうも安倍政権の「政治腐敗」は、往時の発展途上国開発独裁に似ていなくもないのです。法の支配ならぬ人の支配が横行してモラルが踏みにじられながらも、経済成長を強引に推し進めて、一応民衆の無言の支持は獲得するという仕組みです。国外を見てみてもドゥテルテ、トランプ、プーチンなど、強権的指導者が目立ちます。冗談抜きに右翼ポピュリズムファシズム?)の時代は近づきつつあるのかも。

 そういえば、民主主義を超える政治形態としてファシズムの到来が真面目に予見されもしました。議会政治の結果政権を獲得したナチスが好例ですが、民主主義の極限化した形態がファシズムである、という側面が確かにあります。民衆の支持や動員に関心を示す右翼政権は、前近代的封建制専制君主制とは異なり、デモクラシー体験を一応は通過している分、より強力で手強い存在となるでしょう。

 私自身は、安倍政権の経済政策が「他よりマシ」である以上、消極的に追認せざるを得ないと考えています。思うに、民主主義(リベラルな)は、こうした消極的な「○○よりマシ」という発想が根底にあります。積極的な正義を掲げる政治体制なら、ファシズムにせよ共産主義にせよ、強権的なものにならざるを得ませんが、リベラルな民主主義は絶対的な正義を認めない(よく「民主主義は多数決が全て」と皮肉られますが、リベラルな民主主義はその制限も相対化するべきという目的意識を本来は持ちます)ので、たびたび意見や利害を調整しつつ、ほどよい落としどころを見つけて話が進みます。

 安倍政権の隆盛の一つには、こうした派閥や利益団体に支えられた古典的な(第二次世界大戦後以後の)民主主義体制が崩壊しているということが背景にあるでしょう。

 ……とまあ、それ自体としてはよく言われていることを長々と話しながら、しかし実際に顔を合わせて議論すると中々面白い発見も多く、充実した一日でした。

 そういえば、参加者が全員、当初はネトウヨ的な思想だったらしいのですが、いわゆるネトウヨの社会的バックボーンって何なのでしょうか。かつては貧しい若者がといわれながらも、最近はほどほどに裕福な中年の存在が指摘されています。が、裕福といっても経済的な没落の危機を無意識に感じている層だとは思うのですが…。むしろ、階層を超えて包摂するところに、このイデオロギー(通常の日本の右翼思想とも異なる気がします)の魅力があるのかも。

 次回は、外山恒一氏の「マルクス主義入門前篇」を読む社会主義研究会を開く予定です。めちゃくちゃ面白いしタメになるのでぜひ来てね。文系学生は必読だと思います。